拡声機や補聴器のハウリング

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ハウリングは拡声機やカラオケ機器でよく経験されると思います。また、補聴器でもピーピーという音が出ることがありますがこれも同じハウリングです。このハウリングが起こる理屈はどれも同じですが、ここでは分かり易い拡声機で説明します。
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 拡声機やカラオケ機器(カラオケ機器も拡声機の一つです)では多かれ少なかれ、スピーカーから出た音がマイクロホンに入り、それが増幅されてスピーカーから輻射され、そしてそれがまたマイクロホンに入るということが繰り返されます。
そして、先にマイクロホンに入った音よりも、それが増幅され、スピーカーから出た音が再びマイクロホンに入る音の方が大きいと、それが繰り返される度に音が大きくなり、すぐにハウリング状態になります(再びマイクロホンに入る音の方が小さい場合には繰り返される度に音が小さくなるのでハウリングは起きません)。
マイクロホンとスピーカーが近かったり、音量を上げすぎたりするとハウリングが起こるのはこのためです。また、マイクロホンやスピーカーの感度特性によってもハウリングの起こり具合は大変異なります。

拡声機のハウリングはこのようにして起こる

  マイクロホンの指向特性

 ハウリングを起こし難くするためによく用いられるのは単一指向性マイクロホンですが、双指向性マイクも無指向性マイクロホンに比べると優れています。
また単一指向性マイクロホンでも安価なものは側面方向から到達する音にかなり高感度のものが多く、単一指向性だから良いとばかりは言えない様です。

マイクロホンの接話特性(接話マイク)

 接話マイクは、近くの音を収音することを目的に造られたマイクロホンの俗称です。そのため通常は大きな音に耐えられるものがそう呼ばれますが、近接音には高感度、遠い音には低感度になるように造られたマイクロホンもあります。このような特性のマイクロホンはハウリングに強いので拡声機にはよく用いられます。また、この特性を得るために少しの間隔で配置された2個のマイクロホン用いる手法がよく用いられます。この構造のマイクロホンは周囲のノイズを拾い難い特徴もあり、ノイズキャンセルマイクロホン、或いはその構造から差動マイクと呼ばれたりします。パワーメガホンには大抵このマイクロホンが使われています。

 差動マイクでは2つのマイクユニットが数センチの距離で配置されています。そして二つのマイクユニット出力信号の差が出力されます。また、使用者は二つのマイクユニットのどちらかに口を近づけて話します。すると2つのマイクユニットで検出される音の大きさが異なるので出力信号を取り出すことが出来ます。しかし、遠くの音は2つのマイクユニットに殆ど同じレベルで届くので、この場合出力信号は殆ど現れません。従って遠くの音には低感度で近くの音には高感度のマイクとして利用出来ます。

 遠くの音にどの位低感度かは、マイクロホンの構造によっても大きく異なります。例えばコンデンサーマイクよりもダイナミックマイクの方が遠くの音には低感度のようです。また、昔の電話機にはカーボンマイクが使われていましたが、このマイクロホンはその傾向が大変顕著だったと思います。

 しかし現在は殆どの機器で、単体の接話特性は劣る(遠くの音にも高感度という優れた特性の裏返し)ものの安価で小型、しかも周波数特性の優れたコンデンサーマイクが多用されています。

スピーカーの指向特性

 スピーカーもマイクロホンと同様に指向特性を持っています。
ホーン型スピーカーは強い単一指向特性を持った代表です。トランジスタメガホンのスピーカもホーン型です。また最近では、大変小型で強い指向性を持ったスピーカーも実用化されています。このようなスピーカを使用して、音の届きにくい場所にマイクロホンを設置すればハウリング防止に効果的です。
尚、ホーン型スピーカーはハウリング防止に優れ、能率も大変高いものを製造出来ます。しかし、聴者の場所によって音量が異なるし、低音を出すためには非常に大きなホーンを必要とする欠点があります。

 室内用拡声機にはテレビやラジオ等に使われているのと同じコーン型スピーカーがよく使われます。
このスピーカーはホーン型に比べ音が比較的広範囲に広がるのでハウリング防止のためにはあまり優れません。しかし音が一様に届きやすいことは、室内用としては長所でもあります。また、小型の割には周波数特性が良いので良質の音で拡声出来るのも優れた点です。
しかし、ハウリングについては不利なので、ハウリングの起きにくい低音を強調しているシステムが多い様です。

スピーカーやマイクロホンの周波数特性

 スピーカの周波数特性が一様でない、つまり周波数の違いで能率が異なると、拡声機用としては大変不都合です。
何故なら、全体的にはあまり音量を上げなくても特定の周波数だけは大きな音量となり、その周波数でハウリングが起こり易いからです。
コーン型スピーカーは他方式スピーカーに比べると周波数特性が優れていますが、理想と比べれば決して優れている訳ではありません。そのため拡声機用スピーカーの周波数特性は重要です。

 マイクロホンの周波数特性についても、スピーカーと同様のことが言えます。しかし、現在のマイクロホンの周波数特性はスピーカーに比べると大変優れているので、大きな問題になることはあまりありません。

 

 補聴器(特に耳穴型)の場合は音響出力は非常に小さいのですが、マイクロホンとスピーカー(イヤホン)の距離が非常に近いので拡声機以上にハウリングが起きます。

耳穴型では、耳穴と補聴器の間に隙間があると、その隙間を通って音が耳穴の外にあるマイクロホンに届くのでハウリングが起き易くなります。

スピーカーとマイクロホンの距離が耳穴型より遠い耳掛け型はハウリング特性でやや有利です。しかし、高度難聴の場合は増幅度が大きいのでやはり起こります。耳掛け型でよく用いられるイヤーモールドは隙間を無くして音漏れによるハウリングを防止するのが目的です。

箱形補聴器ではマイクロホンとイヤホンの距離が遠いのであまりハウリングは起きませんが、イヤホンとマイクロホンが接近するとやはり起こります。

 長い歴史を持つ拡声機や補聴器ですが、どちらもハウリングの問題は未だに一筋縄ではいかないのが実情です。
ハウリングを軽減するために使用者に出来ることが有るとすれば次のようになるかもしれません。

 1)補聴器の音量は支障が無い範囲で出来るだけ小さくして使う。
 2)耳穴型補聴器は密封度が悪化しないように大切に扱う。
 3)ハウリングが起こるようになったイヤーモールドは造り直す。
 4)箱形補聴器のイヤホンはマイクロホンに近づけないように使う。
 5)補聴器も拡声機もハウリングが起こる場合は高音の利得を小さくして使う。
 6)拡声機のスピーカーとマイクロホンは出来るだけ離して使う。
 3)拡声機のマイクロホンは指向性や接話性の優れたものを使う。
 4)拡声機ではスピーカの向きや置き場所を変えてみる。


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