補聴器の問題点

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補聴器を購入しても9割の人は使わないという噂を聞きます。使わない補聴器を買うのは無駄でしかありません、高いのに。そんなことがないように購入には十分な知識を持って臨みましょう。ここでは最も普及している気導式補聴器類の問題点(特に聞こえ方)を纏めてみました。購入前の知識としてご覧下さい。
このページを読むと補聴器購入をためらってしまうかもしれません。しかし多くの問題を抱えていてさえも、聞こえない人の会話を可能にする補聴器に価値が無い訳ではありません。また、耳の正常な方には補聴器利用者がなかなか大変な状況にあることを理解して頂けますようお願いします。
尚、ホワイトイヤーは補聴器の音問題を殆ど解決してしまいました。だからこのページはデジタル補聴器を含む一般的な補聴器の問題点です。
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補聴器の一般的な問題点を挙げると、

「言葉が聞き取り難い」「近くの声しか聞き取れない」「複数の言葉が混在すると聞き取れない」「騒がしい環境で役立たない」「音源を判別出来ない」「環境雑音が異常に大きく聞こえる」「頭痛を起こし易い」「紙を丸める音や水の流れる音が不快」「音質が不自然で音楽鑑賞には適さない」「多くの補聴器(調整型補聴器)では終わりの無い調整が必要」「咀嚼音が大きく聞こえる」「ハウリングが起こる」「一般的に高価格であり、使用者の経済的負担が大きい」

等です。どれも長い補聴器の歴史の中で常に大きな問題でした。「これほど電子技術が発達しているのに何故まともに聞こえる補聴器が出来ないのか」というのは多くの方の偽らざる気持ちではないでしょうか。

補聴器の問題点をもう少し掘り下げると次の様になります。

1.言葉が聞き取り難い。
 通常の会話において、健康な耳なら楽に言葉を聴き取れます。ところが補聴器を使うと声に神経を集中しないと言葉を聴き取れないのです。それは難聴が原因ではありません、耳が健康でも補聴器を使うと聴き取れないのです。

2.近くの声しか聞き取れない。
 補聴器を使うと、遠くの音と近くの音では大きさに大変大きな差を伴います。健康な耳ではそれ程大きな差ではないのにです。補聴器の実用範囲は通常2〜3m位まです(環境によってかなり異なります)。これでは会議等に役立ちようがありません。

3.複数の言葉が混在すると聞き取れない。
 補聴器利用者は5人でおしゃべりとなるとまるで聞き取れないそうです、相手が一人なら聞き取れるのにです。また居酒屋のように大勢の声がザワザワ、ワイワイ、していると、とても話など出来ません。「1.の言葉が聞き取り難い」と根は同じかもしれません。

4.騒がしい環境で役立たない。
 補聴器の音は、騒音の激しい表通りでは煩いばかり。騒音は撹拌されて聞こえ、会話など出来ようがありません。

5.音源を判別出来ない。
 補聴器は両耳装用することで、音源の方向や場所が判ると言われています。これは全くの嘘ではありませんが、本当はそれ程分かりません。健康な耳では特殊な場合を除き、音源の位置は明瞭に分かります、それがたとえ背後でもです。1.の場合と同様、健康な耳でも補聴器を使うと分かりません。

6.環境雑音が異常に大きく聞こえる。
 補聴器を初めて使われる方にもっとも嫌がられるのがこの現象です。大切な言葉はあまり聞こえないのに、雑音は異常に強く聞こえるのです。そのため最近のデジタル補聴器では雑音を消去する機能がついているものが増えました。しかし、その機能を働かせると不自然だし必要な音まで消えたりする不都合があります(雑音も必要な情報の一つです)。雑音を消去しても根本的な解決にはならないのです。

7.頭痛を起こし易い。
 補聴器の「6.環境雑音が異常に大きく聞こえる」は高い周波数(本当は全域)の雑音ですが、この頭痛は主に低い周波数の環境雑音によって引き起こされます。密閉された洞窟の中で音がこもるのに似ています。これは耳穴の密閉度を低くすれば軽減されます。しかし、そうするとハウリングが起き易くなります。そのためか数年前は多かった耳穴型よりも、密閉度を低くし易い耳掛け型の方が好まれるようになりました(小型化が進み耳掛け型が目立たなくなったことも理由です)。

8.紙を丸める音や水の流れる音が不快。
 薄くて堅い紙をクシャクシャと手で丸める音や新聞をめくる音、或いは蛇口から勢いよく流れ落ちる水の音は補聴器使用者に大きなストレスを与えます。これらの音は言葉と同じ周波数帯にあるので補聴器での軽減は難しい面があります。補聴器をつけて、せせらぎの音を楽しむという宣伝を見ることがありますが、実際どうなのでしょうか。

9.音質が不自然で音楽鑑賞に適さない。
 これはデジタル補聴器で特に顕著です(アナログ補聴器も良いとまでは言えませんが、一般的にデジタル補聴器より良い音です)。最大の原因はデジタル補聴器のマルチチャンネル方式にあると考えられます。4チャンネルとか16チャンネルという言葉を聞いたことがあると思いますが、そのことです。例えば4チャンネルだと音声信号を帯域毎に4つに分断して処理し、その後で再び合算します。ところが別々に処理された信号は綺麗に合算出来ないのです。そのためプロ歌手の歌も音痴に聞こえる等、音楽用として耐えられない音になってしまいます。綺麗な合算を行うにはチャンネル数を十分多く(理想的には無限大)すれば良いのですが、現在の技術ではあまり多く出来ません。

10.多くの補聴器(調整型補聴器)で、終わりの無い調整が必要。
 耳の聞こえ方は、それ程長くない時間でかなり変化します(数日で大きく違うこともあります)。そのため補聴器の特性もそれに合わせて変えてやる必要があります。ところが調整型補聴器は補聴器店で調整するのが原則です(耳穴型と耳掛け型の多くは調整型です)。そのためには、調整型補聴器では度々補聴器店に足を運ぶことになります。理想としては1ヶ月に1度が良いとも言われます。尚、補聴器には無調整型と呼ばれるものもあります。イヤホン型、或いは箱形補聴器の多くはこれであり、この場合補聴器店での調整は不要です。

11.咀嚼音が大きく聞こえる。
 これは「7.頭痛を起こし易い」と原因は同じです。つまり耳穴が密閉される補聴器では咀嚼音が耳穴の中にこもって大きく聞こえるのです。密閉度が高い小さな耳穴型補聴器では問題になることが少なくありません。

12.ハウリングが起こる。
 ハウリングは、スピーカーから出た音がマイクロホンに入り、それが増幅されてスピーカーから輻射されることが繰り返され、繰り返される度に音が大きくなる場合に起こります。繰り返される度に音が小さくなるなら起こりませんが、耳穴型補聴器のように小さな補聴器で起こらないためには高い密閉度が必要です。耳掛け型補聴器では耳穴型よりハウリングが起きにくいので、中度難聴用程度なら開放感のために密閉度を低くした商品が増えました。しかし耳掛け型でも、高度難聴や重度難聴用では密閉度を上げるためにイヤモールドが用いられます。ポケット型補聴器ではスピーカーとマイクロホンの距離を大きくできるのでハウリングは起こり難く深刻な難聴用に適しています。

13.一般的に高価格であり、使用者の経済的負担が大きい。
 補聴器の価格は様々ですが、常識的な価格帯の補聴器でさえ通常の電子機器と比べれば大変高いと言えます。補聴器が高い理由は様々ですが、最大の原因は流通形態のようです。価格が低いと現在の補聴器店は成り立たないかもしれません。
あの小さな筐体にパソコン一台分がはいっているのだから高くて当たり前、という話を聞くことがあります。もしそうならその技術を使えばものすごい性能のパソコンを造ることが出来ますね。


 以上のように補聴器は原因が解明ができなかったがために、今も多くの問題を抱えています(ホワイトイヤーでは完璧とまではいえませんが殆どの問題が解決されました)。そして原因が分からなかったが故に無責任な理屈が多くの人によって語られ、それは都市伝説として流布されるだけでなく、業者の販売トークに利用されているものもあります。
重度難聴用補聴器 類


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