GPSの測位 手法

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GPSはカーナビゲーションに使われるようになり市場が急拡大しました。また、最近はスマホや携帯電話機にも組み込まれて更に身近なものになりました。ここではGPS機器がどのようにして自分の位置を測定するのかを説明します。
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 GPSは複数個の人工衛星から発射された電波を受信して自分の場所を測定します。現在、24個のGPS衛星が地球を回っています。24個の内1個は予備だそうですから測位に使われるのは23個です。実際の測位に必要な数は最低3個、通常は4個以上です。つまり測位には3個か4個以上の衛星の電波を同時に受信出来なければなりません。

 これらの衛星は電波を発射する時の正確な時刻とその場所の情報を電波に乗せて送信しながら地球を回っています。
衛星は、正確に位置が分かっている地球上の地点から観測されてそのデータが衛星に送くられる、或いは衛星の軌道をコントロールされることで、衛星は常に正確な情報を送信出来るようになっています。
また時計の時刻は衛星から送られてくる時刻情報が基準時計と比較されて校正されます(実際には誤差情報が地上から送られる)。

 GPS受信機は衛星が発射する電波を受信して、衛星と受信機間の距離を割り出します。割り出しは衛星で発射された電波が受信機に届くまでの時間を測って計算します。従って受信機時計の時刻と衛星時計の時刻は極めて正確でなければなりません。
3個の衛星が電波を発射した時の正しい時刻が分かり、且つ受信機の時計が正確ならば、発射された時刻と受信した時刻の差で各衛星と受信機間の距離が分かるという訳です。
距離が分かれば、この時の各衛星の位置は明かですから受信機の位置を計算することが出来ます。
ナビゲーションシステムは計算で得られた場所情報を地図上に当てはめ、地図などの関連した情報と共に表示します。

GPS による測位イメージ図

 これで済めばGPS受信機は3個の衛星の電波を受信すれば良いことになります。
しかし、そうはいきません。なぜなら、GPS受信機の時計精度はそれ程高くないからです。実際に内蔵されている時計の精度は通常の水晶時計と同等です。従ってこの時計をそのまま使って正確な距離を測定する事はできません。
正確な距離を測定するためには、受信機の時計は正確に合わせられなければなりません。

 時計の合わせ方の理解のために、テーブルの脚について考えてみましょう。
床が全くの平面で、テーブルの脚の長さがきちんと揃っているなら床に置かれた4本脚のテーブルはガタつくことはありません。しかし、脚の長さが不揃いだったらガタガタして安定しません。
ところがテーブルの脚が3本だったらどうでしょう。この場合脚の長さが少しくらい不揃いでも、テーブルはガタつくことはありません。つまり3本脚テーブルの場合 脚の長さが少しくらい不揃いでも気が付きません。しかし4本脚だとガタガタするので、脚の長さが不揃いであることを知ることが出来ます。勿論床は平面であることが前提です。

 テーブルの脚の長さを衛星と受信機の距離に置き替えて考えて見て下さい。受信機時計が不正確だと正しい距離が測定出来ないので、4つの各衛星と受信機間の距離の関係に矛盾(テーブルのガタに相当)が発生します。そこで、この矛盾が最も小さくなるように受信機の時計を調整します。すると受信機の時計は超高精度のGPSシステムの時計に合わせられます。つまり矛盾が最も少なくなる時刻が正確な時刻であるという訳です。この合わせられた時計を使用して測位が行われます(GPSを使えば大変誤差の少ない時刻を入手することが出来ます)。

 では、障害物が有ったりして3つの衛星の電波しか受信できなかったらどうでしょう。
この場合は受信機が地球の表面に有るものとして計算します。つまり4番目の衛星の代わりに地球の表面を使う訳です。しかし、地球の表面は凸凹ですからこの正確な情報を受信機の中に納めるのは不可能です。
そこで、数式で表現できる地球に似せた仮想の球形情報を使います。この数式は地球の形を正確に表すことが出来ません。そのため測位誤差は大きくなります。また高度を測定する事は出来ません。

 GPSは一般使用が許されていますが本来米軍のシステムです。そのため戦争等があると使用できなくなる可能性も有ります。第一次湾岸戦争の時には、衛星が中東に集められ、他の地域での測位誤差が大きかったという話もありました。


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