電話機の特性

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 電話機にはケータイやPHSも有りますが、このページは、古くからあり今も固定電話機として広く使用されている家庭用アナログ電話機の話です。尚、ADSL等のIP電話に使われているのも電話機そのものはアナログ電話機です。
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 アナログ回線で使用される電話機は2本の線で電話局の交換機とつながっています。電気信号を伝達するには最低2本の線が必要ですが、通話信号には送話信号と受話信号の2つがあります。つまり、アナログ電話では同一の線で送話と受話の2つの信号を伝送しています。
そのため受話回路ではこのライン上の信号から送話信号を減算して受話信号を取り出しています。ところが、この減算は理想的には行われ難く、受話信号には送話信号がかなり混入します。つまり送話者には受話器から自分の声がかなり聞こえることになります。この自分の声は側音、或いはサイドトーンと呼ばれ、送話者の発声を楽にする良い効果があります。しかしこの効果を除けば側音は害でしかありません。

 例えば側音の大きな電話機では受話音をあまり大きく出来ません。なぜなら受話音を大きくするとマイクから入った音が受話スピーカーから出て、それがまたマイクに入ると言うことを繰り返してブー、或いはピーというハウリングを起こしてしまうからです(つまり小さな受話音しか出せない電話機は側音が多いと考えられます)。

 アナログ電話機では多かれ少なかれ側音は有ります。そのためどんな電話機でも受話音量を大きくするとハウリングは起こってしまいます。どうしてもっと受話音の大きな電話機が無いのかと思っている難聴者は多いと思いますが、それはこのような事情によります。
また、電話機に取り付けて受話音量を大きくする機器が販売されていますが、この様な機器を使用しても大きく出来る範囲はハウリングが起こる直前までです。つまり最大受話音量は電話機の側音特性で決まりますから、側音は小さいことが好ましいのです。

 難聴用電話機にはHD60Jのように受話音を非常に大きく出来るものもあります。このような電話機を製造出来るようになったのは、ハンズフリー電話機の発達で音質をあまり損なわず側音を非常に少なく出来るようになったからです。しかし通常の電話機では実用上問題がないのでこの技術は用いられないようです。

 携帯電話機には原則的に側音がありません。これは携帯電話機よりアナログ電話機の方が話しやすい大きな理由です。 そんなことはない、携帯電話でも自分の声が聞こえることがあると言われるかもしれませんが、それは多分、一度相手まで届いた送話信号が反射されて戻ってきたものだと思います。この現象は自分の声が聞こえるまでに時間遅れが有るので分かります。

 以上のような理由でアナログ電話機の設計ではいかに側音の少ない電話機を造るかが腕のみせどころになります。

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