インピーダンスと抵抗インピーダンス:8Ω、のような表示がスピーカーやイヤホンの規格には表示されていますが、インピーダンスって何だろうと思ったことがある方は多いのではないでしょうか。インピーダンスという言葉は電子技術者によって頻繁に使われます。しかし、電子回路におけるインピーダンスの意味を正しく説明した書物を私は見たことがありません。超有名な辞典でさえ極めていい加減な説明がされていたりします。ここではこのインピーダンスを少し文学的に説明してみました。尚、抵抗とインピーダンスは大変近い意味の言葉です。
先に抵抗について考えてみましょう。抵抗という言葉は「無駄な抵抗を止める」というように使われますが、電子機器で使われる抵抗も同様の意味を持ちます。つまり電気を流そうとする力(電圧)に抵抗して電気の流れ(電流)を妨げる要素が抵抗です。
抵抗器を電池のプラスとマイナス間に接続すると電流が流れますが、流れる量は抵抗値(この場合も「抵抗」とだけ表現する場合が多い)が大きい程電流は少ししか流れません。つまり大きい値の抵抗ほど、電気の流れを妨げる力が大きいのです。
抵抗値はΩ(オーム)という単位で表されます。10V(ボルト)の電池のプラスとマイナス端子間に10オームの抵抗をつなぐと1A(アンペア)の電流が流れます。しかし、100オームなら0.1アンペアの電流が流れます。つまり、抵抗値が10倍になると流れる電流は1/10になります。
ではインピーダンスは何なのでしょうか。実はインピーダンスも電気回路では電流を妨げる要素であり、その単位も抵抗と同じΩです。
しかし意味は少し異なります。インピーダンスは他者から働きかけを受ける場合その働きかけにどの位の負担をかけるか、或いは働きかけを行う場合どのくらい相手特性に影響されずに働きかけられるかの特性と言えます。また、インピーダンスは電圧と電流だけとは限らない広い意味を持ちますが、抵抗は電圧と電流に対して適用され、あまり広い意味を持ちません。けれども、電圧と電流しかない電気回路においてインピーダンスと抵抗は見掛け上あまり違いません。インピーダンスの方が概念の範囲が広いのです。
電気関係の仕事をしている人に、「あの人はインピーダンスが高い」と言えば「あの人はかなり頑固で、多分融通がきかない」、或いは「理解力が乏しくて説明してもどうにもならない人」のように解釈してくれます。
ところで電気には直流と交流があります。直流は電池のようにプラスとマイナスがいつも決まっていて変化しないものを言います。しかし、交流は電圧が時間と共に変化をしてプラスとマイナスが入れ替わる動作を繰り返しているものを言います。
抵抗器は原則的に交流にも直流にも同じ抵抗値を持ちます。ところがコイル(導線をぐるぐる巻いたもの)は直流には抵抗値を持たなくて、交流に対しては持ちます。そしてコイルの抵抗値は周波数が高い方が大きくなります。
電気回路ではコイルやコンデンサの様に「周波数によって異なる、或いは異なるかもしれない抵抗値」を持つ、或いは電流によって仕事が行われるなどの動作で電流が変化する、つまり電流が条件や環境変化の影響を受けるような場合にインピーダンスという言葉が多く使われます。つまり抵抗値でも良いのですが、インピーダンスには条件によって異なるかもしれないと言う意味が含まれます。
|