補聴器の種類と特徴と選び方

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補聴器には形状や回路方式の違いなどで多くの種類があり、それぞれ特長を持っています。ここでは「補聴器の種類と特徴」を纏めてみました。選び方にお困りなら是非お読み下さい。
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重度難聴用の補聴器
 

 補聴器は難聴者の聴こえを助ける機器であり、一般的には装着して自然な状態より大きな音を耳に加えます。また医療機器に認定されているものとそうでないものがあり、認定されていないものは「集音器」と呼ばれたりします。しかしこの呼び方に法的な根拠は無いようですし、機能的には同じものです。そのため、切り離しての記述は適切ではありません。そのため、ここでは双方を含む場合は「補聴器」とし、医療機器に限定の場合は「医療機器としての補聴器」、医療機器を除外する場合は「集音器」と記載します。あらかじめご了承下さい。

 高齢になると多くの人が老人性難聴になります。そのため高齢化社会の日本では難聴者が大変多くいらっしゃいます。しかし補聴器を常用されている人の割合はそれほど高くありません。原因は次のようなことが考えられます。
1.補聴器を使っても健康な人には及ばないし、雑音が煩い等の不快感を伴う。
2.補聴器は身体的能力が低い事(特に老い)の象徴でありその使用に屈辱感がある。

「身体的能力不足の象徴」は、補聴器が聴力不足を十分に補えない結果と考えられます。つまり補聴器を使用すれば健常者と同等になるなら「能力不足」ではありません。 しかし、補聴器という商品は多くの問題を持っているし種類も多く、選び方は簡単ではありません。

補聴器(気導式)の主な問題には次のようなものが挙げられます。
1.言葉が聞き取り難い(声に神経を集中しないと聴き取れない)。
2.近くの声しか聞き取れない。
3.複数人の言葉が混在すると聞き取れない。
4.騒がしい環境で役立たない。
5.音源を把握出来ない。
6.雑音が異常に大きく聞こえる。
7.頭痛を起こし易い。
8.紙を丸める音や水の流れる音が不快。
9.音質が不自然、特に音楽鑑賞に適さない。
10.咀嚼音が大きく聞こえる。
11.ハウリングが起こる。

 メガネを使うと大抵は目の良い人並みに見えます。またメガネは若い人に多い近視にも用いられるので、老化の象徴ではありません。しかし補聴器には上記の問題があるし、高齢者の補聴器使用は老化の象徴に見えてしまいます。そのため補聴器の使用には屈辱感があり、これが普及を妨げている最大の原因と考えられます。それでも、使えばかなり改善されるので難聴者が社会活動をするために重要な機器であることには違いありません。
尚、ホワイトイヤーは補聴器の聞こえに関する問題の殆どを解決してしまいました。今後は他の補聴器でも次第に改善されるものと思います。どんな補聴器でも健康な耳のように聞こえる時代はもうすぐだと思います。

【外観による補聴器の種類と特徴】

耳穴補聴器(ITE・・・In The Ear・・・カナル型)
 最近まで補聴器の主流でしたが、性能的に有利な耳掛型の小型化に伴い減少しています。

【長所】
小さくて活動を妨げない。
周囲の人に見えにくい。
メガネを掛ける邪魔にならない。

【短所】
取り扱い難く、紛失し易い。
性能の割に高価なものが多い。
ハウリングを起こし易い。
深刻な難聴に向かない(殆どは軽度〜中度の初めまで)。
密閉度の高い商品が多く、閉塞感、咀嚼音の点で不利。

 一番小さいのは完全外耳道挿入型のCIC (Completely In the Canal) 、中間は ITC(In The Canal・・・ハーフサイズ、ミニカナル)、大きいのはフルサイズです。 この限りではありませんが一般的に、CICは軽中度、ITCは中等度、フルサイズは高度難聴用です。

*CIC補聴器(Completely In the Canal)
 サイズが最も小さく外耳道内にすっぽりと完全に収まり、補聴器装用を最も気づかれ難くい補聴器です。しかし、ハウリングが起きやすい、高度な難聴に向かない、耳垢の害を受けやすい、電池も小さく出し入れ等取扱いに難がある、等の欠点があります。非常にコンパクトで高齢者には使い難いとされています。メーカーによっては、フルシェル、フルカナル、フルカスタム、フルコンカ、ディープカナル等とも呼ばれます。軽度〜中度難聴に対応しています。

*ITC補聴器(ミニカナル)
 目立たない耳穴型補聴器ですが、CICタイプほどは小さくはありません。音量調整は大抵自動(ノンリニア)ですが、手動で音量コントロールが出来るものもあります。またパワーも比較的大きなものがあるなど、CICに比べて適応できる聴力範囲が広いのが特長です。通常は軽度難聴〜中度難聴ですがパワータイプは高度難聴にも対応します。マイクロホンを耳介の溝に収めるタイプもあり、これはスピーカーとマイクロホンの距離を遠く出来るのでハウリングに有利です。

*カナル補聴器(フルサイズ)
 耳穴式としては、一番大きく、多くは高度難聴用です。

耳掛補聴器(BTE ・・・Behind The Ear)
 本体を耳に掛けてチューブで音を耳穴に導くタイプとスピーカー部を耳穴に入れる RIC (Reciever In Canal) タイプがあります。通常は軽度〜中度難聴用ですが、イヤモールドを使用して高度や重度難聴にも対応する製品もあります。

【長所】
目立たない上に活動し易い(最近の小型化による)。
耳穴型よりハウリングが起きにくい。
電池交換など、耳穴型より取り扱いや手入れが容易。
オープンフィットタイプは閉塞感が少ない。
大抵は、ボリュームコントロールやテレコイル等の機能を搭載。

【短所】
耳穴形より大きい。
メガネを掛ける場合は若干不便を感じる。
夏は汗、冬はパイプの水滴に注意が必要。

箱形補聴器(ポケット形)
 外観は、ボケットラジオのようでサイズは大きめの切手くらいからタバコの箱の倍くらいまで様々です。高性能で低価格品が多く、サイズや外観が気にならなければお薦め。

【長所】
各種機能が使用者によって操作出来る。
本体を相手の口元へ近づけて使うことが出来る。
電池代等ランニングコストが低い。
ハウリングが起き難くく高度難聴や重度難聴用として適している。
価格の割に高性能な商品が多い。

【短所】
衣ずれ音が入り易い(マイクロホンがイヤホンと一体化されたものはこの欠点は無いがハウリングに不利)。
サイズが大きい。
イヤホンコードが邪魔。

ヘッドホン形補聴器
 機種は少ないものの比較的古くからあり、根強い人気があります。

【長所】
邪魔なコードがない。
パッド式ヘッドホンなので耳穴に負担が少ない。
手頃な価格の商品が多い。

【短所】
補聴器としては大きく重い。

携帯電話機形補聴器
 携帯電話機のように、必要な時だけ使うのに便利です。

【長所】
使わない時の煩わしさが無い。
雑音はあっても短時間なので気にならない。
価格が手頃。

【短所】
サイズの大きいものが多い。
長時間の連続使用に向かない。

【回路方式による補聴器の種類と特徴】

 一般的に、回路はデジタルとアナログに分類されます。しかし、アナログとデジタルは手段の違いであり、これで聞こえが左右される訳ではありません(録音/再生が繰り返されても音質が劣化しないので、デジタルオーディオの音は良いのですが、補聴器には録音/再生の過程はないのでこれによる音質劣化は無い)。
しかし、敢えてデジタル式とアナログ式の違いを挙げるなら、デジタルは小型で多機能なものが多く、アナログは自然な音質の商品が多いかもしれません。

マルチチャンネルフルデジタル補聴器
 現在のデジタル補聴器の殆どはこれであり、入ってきた音は全てデジタル信号に変換されて処理されます。大抵は音声信号が周波数帯域(チャンネル)毎に分割されて、それぞれ個別にゲインと音量制限を施した後で再び合成して出力されます。

【長所】
小型で多機能品商品を造り易い。

【短所】
高音質商品を造り難い。
 音質が不自然。
 小型ゆえに低音が出難い。
 音楽観賞に適さない。

プログラマブルデジタル補聴器
 音信号はアナログのままで処理されますが、周波数帯域毎のゲインと音量制限はデジタル技術で行われます。過去の方式になりつつあったが、最近現れたチャンネル無し方式はこれに分類されるのかもしれない。また、音信号だけに着目すればアナログと考えるのが妥当。

アナログ補聴器
 音波をそのまま電気信号に変換して増幅し、再び音波に戻して聞く方式。高性能なものも多いが、小型と多機能ではデジタルにかなわない。また、集音器と呼ばれる商品の多くはアナログです。

【長所】
音質が自然。
力強い音質の商品が多い。

【短所】
小型・多機能に向かない。

   
"ホワイトイヤー" や "みみ太郎"はアナログ方式の逸品

【その他の分類による補聴器の種類と特徴】

骨伝導補聴器
 骨伝導方式は音信号を頬骨等に加え、頭骨を介して聴覚神経に音を伝えます。適用範囲は商品によって大きく異なりますが、強力な商品でも高度難聴の初めまで、メガネ型なら軽度難聴用と考えるべきです。箱形やメガネ型があります。

【長所】
耳穴に負担がかからない。
雑音や衝撃音の問題がない。
伝音性難聴用として優れている。

【短所】
電池寿命が短い(骨伝導ユニットのドライブに比較的大きなパワーが必要)。
小型製品が造りにくい。
感音性難聴に向かない。

埋込型骨導補聴器(BAHA:Bone Anchored Hearing Aids)
 普通の骨伝導補聴器では骨とスピーカーの間に柔らかい人体組織が介在しますが、BAHAはインプラント技術で頭蓋骨に直接取り付けます。 通常の骨伝導の長所はそのままでもっとよく聞こえます。

【長所】
通常の骨伝導より鮮明に聞こえる。

【短所】
インプラント手術が必要

FM電波補聴器/デジタル電波補聴器
 電波の送信機と受信機で構成されていてマイクロホンは送信機に、スピーカーは受信機に設けられています。

【長所】
離れていてもよく聞こえる(送信機は話者の至近に設置)。
共聴用として優れる。

【短所】
送信機と受信機の二つが必要。

ブルートゥース補聴器
 電波を用いますが、FM電波補聴器やデジタル電波式より到達距離が短いのが普通です。

【長所】
他のブルートゥース製品と連携使用が可能。

【短所】
他の電波方式より到達距離が短い。

磁気ループ補聴器
 無線方式の一つですが、音声信号そのものが電磁波として伝達されます。

【長所】
電波方式より汎用性が高い(耳掛け型補聴器の多くが電話用として受信機能を内蔵)。
共聴用として優れる。

【短所】
妨害雑音に弱い。
送信機は小型化し難い。
近接するシステムは混信し易い。

人工内耳
 人工内耳は一般に90dB以上の重度難聴で補聴器が役立たない人に薦められ、深刻な難聴の最後の手段的です。動作が著しく異なるので、通常は補聴器とは別物として扱われますが、聴力を回復させるという意味では補聴器の一種と考えられます。
構成はインプラント部と外部スピーチプロセッサに分かれています。インプラント部は頭部に埋め込まれ、その電極束部分が蝸牛と呼ばれる器官に挿入されます。外部スピーチプロセッサは収音した音を電気信号にしてヘッドピースから人体に埋め込まれた受信機に磁気結合で送り込みます。この電気信号が電極束により蝸牛に刺激を与えて音を感じさせます。

【長所】
聴力ゼロでも聞こえる可能性がある。

【短所】
手術が必要。
手術で聴覚神経を殺す(元に戻せない)。
手術後リハビリが必要。
効果は個人差が大きい。
音質が特殊である。


 人工内耳手術は必ず成功するとは限らないし、失敗しても元の状態に戻すことが出来ないので、聴力が残っている場合は慎重に検討すべきです。個人差がありますが、当社のホワイトイヤーは100dB超の難聴でも役立つことが少なくありませんから、先ずはこれの試聴をお薦めします。


下記もご覧下さい。
「難聴の種類と聴力」
「補聴器のデシベル(dB)」
「補聴器の選択」
「補聴器と助聴器や集音器の違い」。
「補聴器の雑音と聞こえない補聴器」
「デジタル補聴器とアナログ補聴器」


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