補聴器のデシベル(dB)補聴器の規格には「適用範囲:〜40dB」などの記載があります。しかし日常生活でデシベルはあまり使われないので、それが何を意味するのか分かり難いのではないでしょうか。 補聴器の規格などに記載されているデシベルは難聴の度合や、補聴器の増幅度、或いは音の大きさ等を表します。 【難聴の度合を表すデシベル】 難聴の度合いは健康な人の聴力と比べてどれほど聞こえ難いかを、デシベル(dB)という倍率単位で表します。 難聴測定時の音量単位にはdBHLが用いられます。dBHLのHLはヒヤリングレベルを表し、「健康な耳に聞こえる一番小さい音の大きさを基準にして倍率で表した音量単位」ですよという意味です。デシベルの基準は0dBですから、「健康な耳に聞こえる一番小さい音=0dB」とした音量表現単位がdBHLです。 しかし、難聴は通常HLの付かないdBで表現されます。つまりこれは、健康な耳の人に比べ何倍聞こえ難いかということであり、どの位大きな音なら聞こえるかという意味とは少し異なります。 尚、0dBHL=4dBSPLです(SPLについては後述)。 つまり、10dBHLは健康な人に聞こえる最も小さい音量の約3倍(10dBは約3倍)、30dBHLは約30倍、40dBHLは約100倍、60dBHLは約1,000 倍、100dBHLは100,000 倍の音量を表します。だから聴力が40dBの難聴者は、健康な人に聞こえる一番小さな音の100倍、60dBなら1,000倍、100dBなら100,000倍も大きな音でなければ聞こえないことを意味します。100dB超の難聴者に聞こえるホワイトイヤーの凄さをお分かり頂けると思います(耳穴の構造が寄与するので、ホワイトイヤーが100,000倍に相当する音を出す訳ではありませんが、従来の常識では考えられなかったことです)。 補聴器の規格に「適用範囲:〜40dB」などの記載があると、この補聴器は健康な人より100倍聞こえ難い難聴者まで適応できるということになります。しかし、軽度難聴、中等度難聴などと記載されていることも多いと思います。これらの表現とデシベルとの関係は「難聴の種類と聴力」をご覧下さい。 また、聴力は音の高さ等によって異なるのが普通であり、数値や言葉は難聴具合の参考値と考えるべきです。また、高度難聴や重度難聴のような深刻な難聴の場合、「適応」は音が聞こえるという意味の場合が多く、言葉の聴き分けは出来ないことも多いので注意が必要です。 【補聴器の増幅度(ゲイン or 利得)を表すデシベル】 この数値は通常、補聴器の増幅能力がどのくらいかを表します。だから聴力とは関係がなく、40dBと記載されていても40dBの難聴者に聞こえるという意味ではありません。つまり、40dBと記載されていたら最大100倍まで増幅出来ることを意味します。 しかし、もし、マイクロホンに入る音を40dB拡大してイヤホンから出せるという意味なら、0dBHLの音を40dBHLまで大きくできるので、40dBの難聴者に聞こえるとも言えます。ところが、この増幅度には通常マイクロホンの感度やイヤホンの能率は含まれません、だから大きな意味は無いと考えるべきです。 【補聴器の出力音量を表すデシベル】 最大出力音量の表示にはdBSPLという単位が使われます。この補聴器の最大出力音量は「120デービー」と言われたら、最大120dBSPLの音量を出せる補聴器という意味です。だから120dBの難聴者に聞こえるという意味ではありません。しかしdBSPLとdBHLの音量差は小さく4dBなので大凡では同等と考えても大きな問題はありません。(最大出力と記載されていたらそれは電気的出力であることが多く、最大出力音量とは異なるのが普通です。) dBSLPは0dB=振幅圧力の実効値が20μP(マイクロパスカル)とした単位であり、物理的な音量の単位に用いられす。 また、20μPの音は人の耳に聞こえる最も小さな音圧とされています。しかしdBHLとdBSLPは少し差があり、0dBHL=4dBSPLです。 下記もご覧下さい。 「デシベル(dB)の話」。 「補聴器の選択」。 「補聴器と助聴器や集音器の違い」。 「難聴の種類と聴力」。 「補聴器の選択」。 「補聴器の雑音と聞こえない補聴器」。 「デジタル補聴器とアナログ補聴器」。 |